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土曜の夜、9時
常連客たちが足を引きずるように店に集まってくる
一人の老人がオレのとなりに腰掛け
ジン・トニックをちびちび舐めている

「若いの、ワシの思い出の曲を弾いてくれないか
 どんな曲だかよく思い出せないんだが 悲しくて甘い曲なんだ
 あぁ、若い頃はしっかり覚えてたんだが…」

La la la, de de da
La la, de de da da da

「歌ってくれよ、ピアノ弾き
 今夜、オレたちのために
 オレたちみんな素敵なメロディーに酔いたい気分なんだ
 あんたのピアノでいい気分にさせてくれよ」

バーテンのジョンはオレの友達
いつもタダで飲ませてくれるんだ
気の利いたジョークとともに タバコに火をつけてくれるけど
彼の本当の居場所はここじゃない

「ビル、オレはすっかりまいっちまってるんだ…」
ジョンがつぶやく
彼の顔からいつもの微笑が消えていた
「あぁ、オレは映画スターにだってなれる男なんだ
 ここから抜け出すことさえできれば!」

Oh, la la la, de de da
La la, de de da da da

ポールは不動産屋兼小説家
彼はずっと独身を通してきた
だけど海軍にいた頃からの友人ディビーとは今でも仲がいい
ディビーはまだ海軍にいて、多分死ぬまでそうなんだろう

ウェイトレスは例によって客と駆け引き
ビジネスマンはゆっくりと酔いつぶれていく
みんなで孤独という名の酒を共有している
でも、それは一人で飲むよりずっといい

「歌ってくれよ、ピアノ弾き
 今夜、オレたちのために
 オレたちみんな素敵なメロディーに酔いたい気分なんだ
 あんたのピアノでいい気分にさせてくれよ」

土曜日ということで店はかなり混んでいる
マネージャーはホクホク顔でオレに微笑みかける
客の目当てはオレのピアノだって知っているから
そいつはほんのちょっとの間だけ
人生を忘れさせてくれるってことを知っているから

ピアノはカーニバルのように響き
マイクからはビールの匂いがする
客はバーに座りオレに小銭を投げて言う
「あんたはこんなところで何やってんだ?」

Oh, la la la, de de da
La la, de de da da da

「歌ってくれよ、ピアノ弾き
 今夜、オレたちのために
 オレたちみんな素敵なメロディーに酔いたい気分なんだ
 あんたのピアノでいい気分にさせてくれよ」



                          訳詩:ださいおさむ


Piano Man
Piano Man

Billy Joel (1998/10/20)
Columbia
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中学生の頃から FEN (Far East Network) が好きだった。
在日アメリカ人(主に米軍関係)のためのラジオ放送局である。
暇さえあれば日本語の一切流れてこないこのチャンネルにダイヤルを合わせ、リアルタイムにアメリカで流行っている曲を聴いていた。
FENで好きになった曲はたくさんあるけど、そのまま日本に入ってこないで誰の曲かずっとわからないまま記憶の中に埋もれてしまう曲もたくさんあった。
そんな曲たちとの再会が、大人になってからのオレの楽しみになったのだけど。

この曲もそんな曲のひとつだった。
FENから流れてくるのを、誰の曲かもわからずに聴いていた。
当時ビリー・ジョエルなんて、アメリカでも無名だったから…

後にテレビのCMで ストレンジャー が使われ、爆発的な大ヒットになるのだけど、当時はまだオレの頭の中でビリー・ジョエルピアノマンは結びつかなかった。
あぁ、今でもしっかり覚えている。ビリー・ジョエルを日本に紹介したのはSONYのCMだった。

The Stranger
アルバム 「ストレンジャー」からは「素顔のままで」、「ムーヴィン・アウト」など続々とヒットが生まれ、1978年グラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤーに輝いた。
さらに「素顔のままで」もソング・オブ・ジ・イヤーを同時に受賞し、ビリー・ジョエルの名は一躍不動のものとなった。


オレがこの時に「ピアノマン」を思い出さなかったのは、その音楽性の違いが大きい。センチメンタルなリズムでしっとりとヴォーカルを聴かせてくれるピアノマンに対し、センチメンタリズムを残したまま力強く、より洗練されたサウンドを展開させた「ストレンジャー」はまるで別人の作のような仕上がりになっている。
この間、実に4年の月日が流れていた…

そんな時代のビリー・ジョエルを、デジタル・リマスタリングで復刻された伸びやかなヴォーカルとクリアーなピアノで存分に味わってもらいたい。
これは「ストレンジャー」に劣らない名盤ですよ!

バーテンダーの名前がジョン、客の名前がポール(しかも彼はPaperback Writer!)というのは笑えるけど、主人公のピアノマンビルときたら、本当に売れずに長い間下積み生活を送っていたビリー自身の「こんなところで何やってんだ?」という悲痛な心の叫びが聞こえる。
ビリー・ジョエル自身にとっても、非常に思いいれのある一曲ではないだろうか…
 


テーマ:音楽といえばこれっ! - ジャンル:音楽


|06-14|訳詩コメント(2)TOP↑
この記事にコメント
こんばんは。
いろいろな人が、人生をほんの一時でも忘れるために、ピアノバーにやって来る・・・。本当に名曲ですね。
高校一年か二年のころ、対訳を見ながらこの曲を聴いて、涙を流した記憶があります。歌を聞いて泣くというのは、あの時が初めての経験でした。
いつかライブでビリーの生の歌を聞いて、そしてみんなでこの曲を歌ってみたいものです。
ださいさんはビリーのライブを見に行ったことありますか?

それと、YouTubeのリンク切れてましたよ〜。
From: エル・ニーニョ * 2008/06/29 22:47 * URL * [Edit] *  top↑
自分が大好きな曲に対し、共感を持ってもらえると嬉しいですね。特に、こうして過去ログにコメントをもらえると尚更です。この曲はそれくらい名曲だということでしょう。

ビリーのライヴ、残念ながら見たことはありません。そんな金があるのなら御飯食べます!生きるために。
一昨年、だったかな、年末にクラプトンとビリーが相次いで来日コンサートを開いたのは。
ビリーの方がチケット高かったらしいです。それと見てきた人の感想は、「ビリーの方が素晴らしかった」ということです。感じ方は人それぞれかもしれないけど、それほど素晴らしいライヴを見せてくれるんでしょうねぇ…
あぁ、貧乏はイヤだ…

リンク張りなおしておきました。もうオリジナルのPVは全部ダメですね。ビリーもシンディ・ローパーもイーグルスもエルトン・ジョンも、有名なアーティストは全部ダメですね…
From: ださいおさむ * 2008/06/29 23:18 * URL * [Edit] *  top↑
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ださいおさむ

  • Author:ださいおさむ
  • ダサイおさむ。
    けっして太宰治(だざいおさむ)ではないが、生まれてきたことを後悔しながら生き恥を晒してます…

    好きな言葉
    「僕は君のためなら死ねる」

    現在生まれ育った東京を離れ、大阪で一人暮らし。
    オレを知る人の誰一人いない街で、どうにか生きている…

    苦手なもの
    …それは生きること。

    持病は鬱と妄想と不眠症。

    好きな洋楽を、愛をテーマに日本語に訳しています。
    しかし英語が得意なわけではないので解釈はあくまでもオレ流。
    ですが、明らかな誤訳は指摘していただけるとありがたいです。


    連絡先 o_dasai@hotmail.com


    YouTube のリンク切れが著作権の関係で多数発生しているようですが連絡いただけると嬉しいです。

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